[2016年 03月 18日]
そうして青年は行動を始めました。
キカイの心臓についての知識を集めるために、キカイリュウといっしょに、せかいに残っているキカイの巣を訪ねてまわりました。
キカイリュウが眠ってしまっても、青年は寝る間を惜しんで知識を集め続けました。
その過程で、青年は知ってしまっていました。おしまいのまちから続くこの咳が、どういうものなのかを。この咳は、かつておしまいのまちを滅ぼした、おそろしい病なのだということを。
咳を一度するたびに、青年の命はじりじりと削れていきました。
病を治すための技術はもう遥か昔に失われてしまっていました。青年にはもう、あまり時間は残されてはいませんでした。
青年は、焦っていました。
読めるものは全て読み、行ける場所には全て行きました。どんなに危険な場所であっても関係ありません。
そうして、もう一度おしまいのまちを訪れた時、青年は確証を得ました。
キカイの心臓にはココロの領域が存在する。
ニンゲンの心をその領域に移し替えることもできると。
同時に青年は気付いてしまいました。
キカイはココロの領域を認識することができない。
だから、たとえ自分がキカイリュウのココロの領域にいったとしても、キカイリュウは決してそのことに気付くことはできないのだと。
それでもいいと青年は思いました。げほげほと咳きこみながら、思いました。
キカイリュウといっしょであれるのなら、もうなんだっていい。
そう、思いました。
[2016年 03月 18日]