2.キカイリュウの見た世界 「あるニンゲンのまちにて」


 「森」の外側はニンゲンの住む場所ではないから、すすめばすすむほど見つけるニンゲンの数は少なくなっていた。
 どのまちにすんでいるニンゲンも、荒野にすんでいる他のどの小さなものたちもすんでいない小さくて乾いた場所に、かくれるようにしてくらしていた。
 山を越えてしばらく歩いていくと、わたしたちはまた、そんなまちにたどり着いた。
「はじめまして」
「はじめまして」
 わたしはきみに続いてまちのニンゲンにあいさつをしたのだけど、ニンゲンはわたしに石を投げてきた。わたしには痛覚はないので、しばらくは金属に石が当たる音を楽しんでいたのだけれど、投げられた石のうちの一つが腹部から顔をのぞかせたきみに当たりそうになったので、わたしはまちのニンゲンを頭部でくわえあげた。
 石がニンゲンに当たったら「いたい」し、けがもするのだ。
 まちのニンゲンは何かを大きな声でいっていたのだけれど、わたしにはその意味をよく理解することはできなかった。
 わたしはまちのニンゲンをはなして、元来た道を引き返し始めた。
 まちを出てから、きみはずっと黙っていた。道を進み、丘を登り、まちが砂の丘のむこうがわに消えた頃になってぽつりと「ぼくたちは、いっしょにいてはいけないのだって」と言った。
 わたしは「なぜいっしょにいてはいけない?」と尋ねた。
 きみはただ「わからない」と答えた。


[2016年 02月 07日]

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