2.キカイリュウの見た世界 「ある箱のかたちをした機械たちの中で」


 大地が盛り上がり岩山となった場所に、とても大きな箱があった。箱からはたくさんの機械がぞろぞろと出てきて、たくさんの機械がぞろぞろと入っていった。見つかったら危ないかもしれないので、きみには腹の中に隠れてもらうことにした。
 たくさんの機械たちに続いて、わたしたちも箱の中に入っていった。きみは「ありみたいだ」といったけれど、わたしにはありがどんなものかわからなかったので何もこたえなかった。
 箱の一番奥の小さな箱の中で、呼吸音がした。覗き込むと、不思議なものがいた。それは目を閉じていて、たくさんの装置に繋がれていた。皮膚はわたし達のようにかたくつめたくなく、触れれば裂けそうなくらい柔らかで温度も有していた。それは、きみのように、小さいけれどニンゲンの形をしていた。
「ニンゲンだ」とわたしは言った。
「いきているの?」と腹の中に隠れていて見えていないきみは聞いた。
 わたしはちょっと考えたあとに、「ううん、いきていないよ」と答えた。
「しんでいるの?」ときみはすこしこえの質をかえて聞いた。そんなきみのこえを聞くと、なぜか、きみをたべようとおもったときにいたくなった場所が、ほんのすこしいたくなった。
 きっとこれがきみの言うさみしいとかかなしいなんだろうと根拠のない理解をわたしはしていた。

「しんでいないよ」とわたしは答えた。


[2016年 02月 09日]

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