4.異伝

『If---とある少女と機械竜の物語』 あきひめ

「星が見えるでしょ、」
『ホシってなに?』
「宝石みたいにきらきらしてるやつ、夜空にあるの。」
『あれのこと?』
「きっと、そう。」

「あの日、あなたに出逢ったことは、あたしの人生で一番の奇跡だった。ママは奇跡なんてないって言ったけれど、あたしは信じてる。あなたに逢えたことは、奇跡で、運命。あなたは、大きな大きな、あたしの大切なヒト。」
(オワリノクニ出身の少女、ドリズルの言葉)

 あたしには、パパとママがいた。弟と妹もいた。最初にいなくなったのは、パパだった。パパはある日突然いなくなって、何日か経った頃に小さな箱になって帰ってきた。ママは泣きながら言った、パパはお星さまになったのよって。次にいなくなったのは、弟だった。弟も、パパと同じように突然いなくなって、また小さな箱になって帰ってきた。あたしの家からは人がいなくなって、箱が増えた。ママはまた、弟はお星さまになったのよって言ったけど、あたしには箱になったように思えた。そうして、ママが死んだ。ママは毒を飲んで死のうとした。あたしと妹と3人で。でも、あたしと妹は生き残ってしまった。妹は足が動かなくなって、あたしは目が見えなくなった。あたしが12歳のときのこと。
 あれから2年しか経ってないけど、あたしはあのときより大人になった。あたしたちの国が、オワリノクニと呼ばれていることを知った。この大きな大きな世界の片隅にある小さな小さな国だからっていうのと、周りの国がいつも戦争をしていて、その戦争のギセイになってるから。ギセイってなんだろう?兵隊として男の人が根こそぎ連れて行かれてしまうこと?奴隷として女の人がよそから来た人たちにところ構わず裸にされて暴力されること?子供たちがゴミ山の中で生活してること?生まれたばかりの赤ん坊が野良犬に食べられてしまうこと?あたしには、よくわからないけど、あたしは大人になった。妹のためにお金を稼ぐ方法を見つけたし、目が見えなくてもひとりで道を歩けるようになったし、あの頃よりたくさんの、ほんとうにたくさんのことを知った。あたしはある日気づいた。この国にいたら、あたしたちはそのうち死んでしまうってことに。大発見だと思った。だから、転びながら一生懸命走って妹のいる路地へ帰った。路地に辿り着いたとき、妹は冷たくなってた。鉄くさいぬるぬるまみれで、裸で、路地に倒れてた。あたしは、ひとりぼっちになった。
 ひとりは淋しかったけど、実は慣れっこだった。目が見えなくなってから、あたしはずっと暗闇の中にひとりきりだったから。あたしは、ひとりでこの国を出ようと考えた。この国を出て、もっと綺麗な国に行く。そこで王子様に優しくしてもらうんだ、昔ママが読んでくれた絵本のお姫様みたいに。ピンクのきらきらの、綺麗なドレスに綺麗な靴と宝石のティアラ。泥まみれの戦車じゃなくって、白いお馬さんに乗って、オワリノクニじゃなくてお花畑の中を歩くの。あたしにはできる。きっと、できる。そう、知らない人に暴力されながら決めた。知らない人はお金をくれた。いいひとだ。
 周りが静かになって、夜が来たんだとわかった。あたしは宝物を持って、いつもの路地を出た。国のはじからはじまで、まだ目が見えた頃に一度だけ妹と歩いてみたことがある。子供の足にはとっても広くて、終わりがないように思えたけど、今のあたしならきっと大丈夫。あたしは止まらず、ずんずん歩いた。壁を伝って、時々目印を確認しながら、どんどん歩いた。たくさんの人にぶつかったし、いろんな人になじられた。途中で靴が片方なくなった。それでもあたしは歩き続けた。朝が来る前に、国の外に出た。
 国の外では戦争が起きてた。夜中はどうやら休戦中らしくて、見張り役の兵隊さんに姿勢を低くしろ!と怒られた。あたしは泥の中を這っていった。ときどき誰かに蹴られたり踏まれたりした。
 体中泥まみれになって、服がやぶけて、息が苦しくなった頃、近くでたくさんのものが動く気配がした。門を出たばかりの時あたしを叱った兵隊さんたちとも、国の中で感じた人間たちとも違う、やけに規則正しくて気持ちが悪い気配だった。ごそり、ごそり、と蠢く音もする。近いのに、誰も近付いてこない。兵隊さんたちのようにあたしのことを踏んだり蹴ったりもしない、でも視線だけは確かに感じる。気配も近い。少し動きを止めてみて、また動き出してみても、向こうの動きは変わらない。
「兵隊さん?」
 あたしは不安になって声を発してみる。
「           」
 返ってきた声は、耳とお腹の奥が痛くなるような音だった。声じゃなかった。言葉じゃなかった。
「だれなの?」
「           」「            」「           」
 キーンとかピーとかガガガとかギリギリとか、うまく言葉に出来ない音が一斉に返ってきた。いつの間にかあたしは取り囲まれていたらしい。
「あ……!」
 あたしは身動きを止めて、泥の中で膝を抱えて丸くなった。
 きっとここは、戦争の敵のいるところなんだ。敵だからあたしの声に答えてくれないし、おんなじ国の人間じゃないから言葉も通じないんだ。戦争って、人を殺すんだ。兵隊さんは敵を殺すんだ。あたしを取り囲む敵の兵隊さんたちは、あたしのことを殺そうとしてるんだ。どうしよう、どうしよう。せっかく生きるために国を出てきたのに、こんなとこで死んじゃうなんて。泥まみれで、ここがどこかもわからなくて、なんで殺されるのかもわからないなんて。そんなの、いやだ、怖いよ。なんで、あたしなの?あたしは、生きていたかっただけなのに。
「だれか……、」
 あたしの目から涙が溢れてくるのがわかった。怖くて怖くて、たまらない。あたしを取り巻く気配は、どんどん近付いてくる。輪を縮めるように、じりじりと、音も近くなる。
「敵だ」「ニンゲンだ」「ニンゲンは敵だ」
 不意に軋んだ言葉が聞こえてきた。
「ニンゲンは殺さないと」「ニンゲンは敵だ」「敵は殺さないと」「ニンゲンを殺せ」
 ニンゲンはきっとあたしのことだ。
 すると、ずしり、ずしり、という重い足音が近づいてきた。気配は小さな山のようなかたちをしている。
 あたしのことを踏みつぶすつもりなのかな?それとも、戦争の相手はもしかしたら巨人なのかもしれない。世界に無数にある国には、人間じゃない生き物の国もたくさんあると誰かが話していた。機械の国、巨人の国、小人の国、人魚の国、他にもきっとたくさん。
 あたしは涙を止めるために、そんな能天気なことを必死に考えていた。体をこわばらせていれば、少しは殺されにくくなるかな?なんとか、死んだふりで誤魔化せやしないかな。そんなわけないか。よしんば逃げられても、あたしは目が見えないから逃げるのにも時間がかかるし、仮に目が良かったとしても、あたしは妹に負けるくらい足が遅いから、意味が無い。
 そこまで想像したところで不意に、
『ニンゲン、食べる。』
 という声が聞こえてきた。正しくは声ではなかった。大気を震わせて耳から入って来る音じゃなくて、心の中に、頭の中に突然降ってきたような声だった。
「だれ……?」
 あたしは体を起こして周囲を見回した。正確には見えていなかったけれど。
「ニンゲンが生きてる」「はやく殺さないと」「ニンゲンは敵だから」「はやく殺さないと」
 耳を劈くような言葉が一斉に襲ってくる。その中で、あの音じゃない声だけがはっきり聞こえた。
『食べる。』
 その声は、優しい声だった。今まで聞いたこともないくらい、優しくて悲しい声だった。あたしは咄嗟に聞き返す、
「食べるの……?」
『うん、ニンゲンだから。』
「そう。」
 不思議と言葉が続いて行く。あたしは今にも殺されそうな状況にいるはずなのに、それでも言葉が止まらない。
「あなたは兵隊さんなの?」
『ニンゲンを食べる。』
「どうして?」
『そういうめいれいだから。』
「ニンゲンが好きなの?」
『すき?』
「おいしいから食べるの?」
『おいしいってなに?』
「もっと食べたいって思うこと。」
『……思ったことない、』
「ニンゲン食べるの、楽しい?」
『たぶん、たのしくない。』
「じゃあ、あたしと逃げない?」
 自分で自分の言葉を疑った。周りの雑音はもう聞えなかった。あたしと、目の前の大きな彼のだけの世界。あたしはゆっくりと立ち上がって、彼に向かい合う。霞んだ黒い影だけの彼の姿に、少しずつ色がついて行く。もう何年も見ていない虹のような七色から、雨の日みたいな灰色、そしてくすんだ鉛色に。大きな彼は、機械の竜だった。大きな手足に小さなお顔、大きな目はがふたつ。
「あなたが、見えるわ。」
 真っ白の誰もいない世界で、あたしは彼に一歩近づいた。彼は動かないまま、
『目が見えないのに?』
 と言う。
「そのはずだったのに、見えるの。他のものは見えないけど、あなただけ見えるの。」
 あたしは彼の顔に手を伸ばしながら、言った。
「これって、恋よね?」
 次に気付いたとき、あたしは元の真っ暗な世界に戻ってた。何も見えない世界。あたしの、変わらない世界。でも、謎の安心感があった。あたし、食べられちゃったの?
『動かないで、静かにしてて。』
 彼の声がした。あたしははっと息をのんだ。ここは、彼の中なんだ。
「食べた?」「ニンゲン死んだ?」「死んだ」「もっとニンゲンを殺さないと」「もっと」
『食べた。ニンゲン死んだ。』
 さっきからあたしの周りを取り巻いてたたくさんの声は、彼の仲間の機械の群れだったんだと気付いた。彼が嘘をつくと、群れの声は遠ざかっていった。あたりがしんと静まって、彼の体を打つ雨の音が聞こえてきた。雨と機械油の臭いがする。
「……あたし、食べられたの?」
『おしえてほしい。』
 あたしの言葉を無視した彼の言葉を合図に、あたしは彼の中から押し出された。手足に絡みついていた、コードのような針金のような、冷たい感触のするロープのようなものが少しずつ離れていって、あたしは水溜りの出来た地面に体を投げ出された。泥が跳ねて顔が汚れるのがはっきりとわかった。ゆっくりと地面に手をついて、あたしは体を起こして立ち上がる。
 不思議な感覚だった。世界は相変わらず真っ暗で、あたしの目は見えないままのはずなのに、真っ暗な世界に彼だけがぽっかりと見えている。彼だけが見える。自分の手も見えない暗闇の中で、大きな機械の竜の姿の彼だけが見えている。
『恋って、なに?』
 彼が首を傾げながら言う。あたしは髪についた泥を払いながら、
「好きってこと。」
 と答える。
『好きってなに?』
 彼は感情の無い目でじっとあたしを見つめてた。あたしは、その視線に囚われて呼吸も忘れそうだった。
 目が見えなくなってから一度も気にしたことが無かった感情を思い出す。あたしは、どう見えてるの?あなたには、あたしはどう見えてる?
 あたしは唇を震わせて、そっと自分に言いきかせた。
「好きは、殺したくないって思うこと、」
 一言を捻りだすたびに、彼の姿が近くなる。のそのそと大きな足でこちらに向かって歩いてくる。ゆっくりとした動きには優しさがあるのに、あたしは怖くなってしまう。彼がニンゲンの敵だから怖いんじゃない。彼が機械だから、竜だから怖いんじゃない。
「好きは、守りたいって思うこと、」
 あたしが怖いのは、あなたが何を考えてるかわからないこと。あなたに嫌われたくないってこと。今のあたしはどう見えてる?髪にブラシしたこともないの、服だってボロだし、頭から泥の水溜りに浸かったばかりなの。あなたに好かれたいけど、あたしはどんな姿かもわからないの。だって、あたしの世界には、あなたしか見えてないんだもの。あたし、
「好きは、……」
 あなたに、恋しているの。あなたに好かれたいの。嫌われたくないの。
 あたしが言葉に詰まって俯く瞬間、彼の長い首がしなって、彼の瞳にあたしが映った。あたしは、光を失ってから初めてあたしの姿を見た。彼が言う。
『となりにいたいってこと?』
 彼の瞳に居たのは、ボロを着て、泥で汚れた顔と、彼より小さい体、目元には大きな傷を持ってるあたし。あたしの本当の姿。彼とは違うニンゲンのあたし。終わりの国の暗闇の中でひとりぼっちだったあたし。
 あたしは瞳の鏡のあたしをじっと見つめた。鏡の中のあたしも、あたしをじっと見てた。あたしの顔半分を覆うような大きな傷を、初めて見たあたしは、あたしが怖かった。まるでオバケみたい。指先で恐る恐る傷をなぞってみる。傷は消えなかった。泥の汚れじゃない、これはあたしから光を、全てを奪った、怪物なんだ。
 次の瞬間、その傷を冷たくて硬い機械の彼の鼻先がつんと撫でた。あたしは、呆然としてうわごとのように言葉を発する。
「……いまのって、キス?」
 あたしの顔から離れた彼の瞳に、またあたしが映った。彼は首を傾げて、
『キスってなに?』
 と尋ねた。あたしはしばらく考えてから、
「約束。ずっと、そばにいるっていう約束よ。」
 とだけ答えた。
 彼が黙ってしまうと、あたしの世界はしんと静まり返った。機械の群れのざわめきも、雨の音も、戦争の息遣いもない。彼の呼吸は聞えない、あたしの心臓の音だけがあたしの中で反響して、耳鳴りに変わっていく。
 あたしは彼をじっと見つめた。彼の汚れた灰色の身体、トカゲを思わせる顔つき、あたしを映した瞳はよく見ると大きなボルトのような形をしてる。長い首には大きな鱗が蛇腹のように重なり、胴体はどっしりとした雫形。そんな胴体に大きな前足と、意外にも短い後ろ足、そして首と同じように大きな鱗が折り重なったような長い尻尾が付いている。それぞれの手足には太くて鋭い爪がついていて、前足の繋がる肩部分には鎧のような棘が上向きに生えている。あたしを群れから守ってくれた胴体は、今は花びらのつぼみのようにしっかりと閉じていて、心臓を模したであろうハートの錠がおりている。
 彼は不思議な生き物だった。どこからどう見ても機械だし、彼をかたどっているのは全て体温のないパーツだと分かる。それなのに、彼は生きてる。心臓に鍵をかけていても、彼が生きてるとわかる。動くたびに、身体の中から油をさしてない古い機械の、ぎしぎし軋む音が聞こえていても、彼は確かに生きてる。わたしには、わかる。
「あたしのそばにいて。」
 あたしは彼の冷たい顔に手を伸ばした。彼の長い首が、またしなってぎしぎしと音をたてた。目を瞑ってそっと、彼の鼻先にキスを落とす。雨と泥と機械の臭いがする。
『いいよ。』
 彼が言う。口元も目も動かさずに、でもはっきり言った。
「あたしのことを、好きになってくれる?」
『殺したくないし、守りたい。これは、好きってこと、でしょ?』
 あたしは彼の大きな前足に抱きついた。雨で濡れてひやりと冷たい。
「あたしの心臓の音がわかる?」
 感触に次いで思い出したように、雨の音が聞こえてきた。
『わかる。』
 彼の前足がのそりと動いて、あたしを胴体のほうへ押した。ハートの錠があたしの唇に触れた。
「あたしも、あなたの心臓がわかるわ。」
 そうしてあたしと彼は雨の中いつまでも抱き合ってた。気付くと雨は止んで、夜になっていた。
「これからどうしよう。」
 あたしは彼から身体を離して尋ねてみる。
『きみはどうしたい?』
 彼が身体をゆっくり揺らしながら言う。
 夜の澄んだ空気の中で、随分と遠くから銃声が聞こえた。戦いは続いているんだろう。オワリノクニには、もう戻らない。
「あたしは、あなたと生きていたい。」
『ニンゲンじゃないのに?』
 あたしは彼の言葉に小さく笑って、硬い胴体にぎゅっと抱きついた。彼の心臓に身を任せているだけで、あたしは夢心地だった。
「あなたは、あたしの大切なヒトよ。だって、恋人だもの。」
『恋人ってなに?』
「特別に好きってことよ。」
 彼は少し黙って、
『恋人は、どうするの?』
 とぽつりと呟くように聞いた。あたしは、
「恋人同士は無敵なの、だからどこまでも行けるのよ。」
 と更に強く彼を抱きしめた。
 あたしはいつか夢見た絵本の世界を思い浮かべていた。彼は、あたしの王子様。ひとりぼっちで名前もないあたしの、白馬の騎士。あたしを助けてくれて、あたしにキスをしてくれた。見た目は機械だし、ニンゲンの敵だけれど、彼は確かにあたしの大切なたったひとりのヒト。ここは湿った泥まみれの戦地で、真っ白のお城も色とりどりの花畑も、宝石のティアラも綺麗なドレスもないけれど、そんなことは関係ない。だって、あたしの世界には、彼しか、あなたしかいないんだもの。
「あたしのことを守ってくれる?」
『うん。』
「あたしのそばにいてくれる?」
『うん。』
「あたしのことを好きでいてくれる?」
『うん。』
 あたしたちはゆっくりと歩き出した。オワリノクニに背を向けて、汚れた戦地からこっそりと脱け出すように。彼の一歩はとても大きくて、あたしは慌ててついて行く。足元も周りの景色も何も見えないけれど、彼の姿だけはいつまでも消えなかった。まるで、夜空にぽっかり浮かぶ月のように。
「あなたの名前は?」
 あたしたちは当てもなく歩いた。どこまでも歩いて行ける気がしたから。
『わからない。きみは?』
「あたしは、ドリズル。霧雨って意味よ。」
 銃声と悲鳴は遠ざかって、泥まみれだった地面は少しずつ硬くなっていく。あたしの身体についた泥も、乾いて落ちた。
『きれいな名前。』
 あなたとなら、どこまでも行ける。
 あたしの世界には、あなたがいるから、もうひとりじゃない。あたしの目は見えないままだけど、あなたの瞳を通せば自分を見ることもできる。ひとりには慣れっこだって言ったけど、そんなのは嘘。あなたがそばにいてくれないと、あたしはどこにだって行けないわ。
「夜の空気は気持ちがいいわね、」
『真っ暗だ。』
「そんなことないわ。」
『え?』
 あたしは立ち止まって、上を指さした。彼も立ち止まって、空を見上げる。
「空には星が見えるでしょ、」
『ホシってなに?』
「宝石みたいにきらきらしてるやつ、夜空にあるの。」
『あれのこと?』
 彼が前足を持ちあげて、大きな爪で空を指した。
「きっと、そう。」
 あたしはそっと俯く。
『きみに、似合う。』
 彼の囁くような口調に、胸が高鳴った。
 見えない夜空の輝きよりも、あなたとの世界に未来があるなら、あたしはそれでいい。あなたとこれからもずっと、どこまでも、一緒にいたいから。きっと、ふたりなら、どこへでも行ける。どこまでも行ける。
「キスして。」
 あなたとふたりのこの世界が、あたしたちの旅の始まり。ハジマリノクニ。

To be continued……?


[2016年 03月 27日]

inserted by FC2 system