2.キカイリュウの見た世界 「ふかい霧の中にて」


 目が覚めると、また霧は濃くたちこめていた。わたしはきみの持つカンテラの光だけをたよりにして、きみの後ろを歩いていった。こんなに霧で視界が悪いのに、きみはまっすぐどこかにむかって進んでいるようだった。
「むかし」ときみはいった。
 何のことだろうと考えて、わたしはきみといっしょにいる記録を開く準備をした。「こころ」がこまかく振動した。
「はこのなかにいたこどもをおぼえている?」ときみはたずねた。
すこし記録の中を検索したあとに「おぼえている」とわたしはこたえた。
 大きなはこの中に、いきていなくて、しんでいない、こどもが入っていたことを考えた。
「あのこどものきもち、いまならわかるきがする」
 わたしはきみの言葉を理解できずに、ただ黙って歩いていった。


[2016年 02月 19日]

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