2.キカイリュウの見た世界 「荒野にて」


 長い長い一日だった。
 かたい足を進めるたびに、乾いた地面は細かく舞い上がって、足跡というものをのこしていった。森から遠く離れたこの場所では、活動するものはほとんど観測できない。大気や温度すらも停滞し、内側にいるきみと外側にある世界の区別が曖昧になりそうだった。
 腹部開閉機構から顔をだしながら「せかいはどんどんしんでいくの?」ときみはいった。
「しぬってなに?」とわたしはきいた。
 きみは「いきていないことだよ」とこたえた。
「いきるってなに?」とわたしがきくと、ちょっとかんがえたあとに、「うごきつづけることだよ」ときみはこたえた。


[2016年 02月 03日]

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